大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜家庭裁判所 昭和60年(家)853号 審判

主文

被相続人宮城杉代の遺産である別紙遺産目録記載の建物(借地権付き)を裁判所の競売に付する。

前項による競売の売得金より費用を控除した金額を各当事者に次の割合で分配する。

申立人 松木国洋  3分の1

申立人 松木紅   3分の1

申立人 玉井正子 12分の1

申立人 立川ツマ 24分の1

申立人 立川順一 24分の1

申立人 林忠子  12分の1

相手方 立川祥  12分の1

理由

1  申立ての要旨

被相続人宮城杉代は昭和57年9月4日死亡し、各当事者はその相続権を有するところ、相手方において遺産分割の協議に応じないので、分割の審判を求める。

2  当裁判所の判断

(1)  相続の開始、相続人の死亡とその相続開始、各相続人の法定相続分本件記録中の各戸・除籍によれば、次の事実が明らかである。

ア  被相続人宮城杉代は昭和57年9月4日死亡し、その相続人は弟である申立人松木国洋、妹である申立人松木紅、妹である松木花代、姉である亡立川タカ子の長女たる申立人玉井正子、同じく長男たる立川誠、同じく二女たる申立人林忠子、同じく二男たる相手方立川祥であり、法定相続分は申立人松木国洋、松木紅、松木花代がいずれも4分の1、申立人玉井正子、立川誠、申立人林忠子、相手方立川祥がいずれも16分の1であつた。

イ  昭和60年8月26日松木花代が死亡し、その相続人は前項記載の各相続人であつたので、被相続人亡宮城杉代に対する法定相続分は、申立人松木国洋、同松木紅がいずれも12分の4(3分の1)申立人玉井正子、立川誠、申立人林忠子、相手方立川祥がいずれも48分の4(12分の1)となつた。

ウ  昭和61年1月22日立川誠が死亡し、その妻たる立川ツマ及び長男たる立川順一が相続をし、いずれも申立人として本件手続を受継した。その法定相続分は各2分の1であるから被相続人亡宮城杉代に対する相続分の48分の2(24分の1)ずつを相続したことになる。

(2)  遺産の範囲

資料によれば、被相続人宮城杉代は別紙遺産目録記載の建物を所有し、その敷地たる○○市○区○○○×丁目×××番×山林1624m2の一部約347m2を地主鈴木健一から賃借していたことが認められる。このほか、同被相続人は○○電力株式会社の株式をいくらかと、約164万円の郵便貯金を有していたことが認められるのであるが、これらの大半は換金のうえ被相続人宮城杉代の葬儀、法要等の費用にあてられたことが認められるうえ、各当事者は前記建物と借地権についてのみ分割をなすことに合意しているので、本件遺産分割の対象をこれに限定して審判することとする。

上記の借地については、被相続人宮城杉代の死亡直後申立人松木国洋の妻が地主に賃料(月額2万1400円)の支払をしようとしたところ、本件借地権を誰が相続するのか明らかでないとしてその受領を拒絶されたため、以後弁済供託をして現在に至つている。ただし、地主から借地契約の更新拒絶又は契約違反を理由とする建物収去の請求がなされたことはない。

(3)  遺産の評価

不動産鑑定士○○○○○、同○○○○作成の鑑定評価書によれば、本件建物の評価額は65万円、本件借地権の評価額は590万円とされている。借地権については、権利の存否が係争中のものとして正常価額の10分の4に減価して評価されているが、前記のとおり更新拒絶(本件借地契約は昭和57年12月16日に20年の期間が満了したものである。)がなされた事実もなく、借地人の側において契約違反の事実があつたことも窺われないのであるから、更新料の支払等を要することを考慮しても、上記の評価は非常に控えめなものということができる。しかも、上記鑑定評価の時点は昭和59年5月10日であるところ、同年から昭和62年にかけて○○市を含む首都圏一帯の地価が著しく高騰したことは公知の事実であるから、現時点における本件借地権の価額は上記評価額を大幅に上廻ることは確実と思われる。

(4)  遺産分割の方法

家庭裁判所調査官の調査結果及び申立人松本国洋、相手方立川祥各審問の結果によれば、相手方立川祥は被相続人宮城杉代の死亡前から妻子と別居して本件建物に居住を始め、現在も居住を続けていること、申立人らはかつて本件建物を地主鈴木健一に買い取つてもらうことを考えその打診をしたところ、地主においても建物買取の意思がなくはなかつたが、買取価額の点で折合いがつきそうもなかつたこと、相手方立川祥は資力に乏しく、本件建物(借地権付き)を単独で相続したとしても、その代償金として申立人らに対し各相続分に応じた金員を支払うことは到底不可能であること、現在、申立人らとしては、遺産分割の方法として、本件建物(借地権付き)を他に売却したうえ売得金を相続分に応じて各当事者が取得することを希望していることが認められる。

以上の諸事情に照らして考えるに、当裁判所としては、本件建物(借地権付き)を裁判所の競売に付し、その売得金を各当事者が各相続分に応じて取得するものとするのが価額形成のために最も公正な方法であり、かつ、最も確実に売却の実施が期待できるものと考える。

(5)  結論よつて、当裁判所は、上記のとおり遺産分割の方法を定めることとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 南新吾)

別紙遺産目録<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!